先日、世界経済フォーラム(WEF)という団体が「ジェンダーギャップ指数2021」を発表しました。SDGsの5番目の目標でもあり世界的に注目度の高い指標ですが、日本の順位は世界156カ国中 なんと120位!(前年は121位)。先進国の中ではここ数年間、最下位を独走中。つい先日もオリンピック組織委員会での女性蔑視発言で注目を集めたばかりですが、またまた世界中に恥をさらしてしまいました。
この記事は「ジェンダーギャップ」についての理解を深めることで、日本人としてどう立ち回るべきなのか?考えるきっかけにして頂くことを目的としています。
ジェンダーギャップ指数とは?
ジェンダーギャップ(Gender Gap)を直訳すると「男女間の格差」となり、簡単に言うと「性の違いによる差別」「男尊女卑の考え方」と表現できます。
世界経済フォーラムは「健康」「教育」「経済」「政治」という4つの分野で各国の状況を評価し、その結果を毎年発表しているんですね。
「ジェンダーギャップ指数2021」の結果詳細は「ハフポスト様」のサイトに記載されています。
分野ごとの日本の順位を左表で示していますが、政治と経済が(毎年のことですが)特に悪い数値となっています。
政治においては女性の国会議員が少ない(現在の女性比率は約10%)。
経済においては企業の女性管理職が少ない(現在約15%)
これが評価を下げる主要因となっており、完全平等を50%と考えると、理想からはほど遠い結果です。
この対策として、国会ではクオータ制(4分の1を表すQuarterではなく、割当てを表すQuota)の導入が検討されていますが、「2~3割程度を強制的に女性にしてしまおう」というシステムで、世界の多くの国では既に採用されているようです。(だから相対的に日本の順位が下がってしまっているんですね)しかし私はこの単純な発想にはかなりの疑問を持っています。
そこで日本のジェンダーギャップを考えるうえで、まず世界の状況、及び日本の歴史を振り返ってみたいと思います。
世界のジェンダー平等
SDGsの目線でジェンダー平等を知るには「ユニセフのサイト」が分かり易いかと思います。そこには発展途上国の状況が記されていて、女子が道具のように人身売買されていたり、「FGM」という若い女子の女性器を刃物で切り落としたり。日本にいたら想像もできないような習慣が当たり前のように実施されているんです。
また先進国においてはLGBTという生物学的な性別ではなく「心の性」を表す言葉が注目されており、ゲイやレズビアンの人権も認めようとする気運が高まっています。
このように一言でジェンダー平等と言っても日本人が考える「男女の差別」とは違った、より深い問題を含んでいることが分かります。
日本の伝統/歴史
一方、日本は世界とは違った歴史を持っており、これを無視してジェンダーを語ることは出来ません。
まず日本の象徴である天皇。天皇制のルールを定めた皇室典範において「天皇は男系男子に限る」と定められています。明治天皇のやしゃごで有名な竹田恒泰氏曰く、なぜ男系男子に限るのか?その理由は不明とのこと。
日本相撲協会もこの手の話題にはいつも登場しますが、未だに「土俵への女性立入を禁止」。その理由は江戸時代からの「伝統」らしいです。
全国で行われるお祭りなども「女人禁制」としている場合が多いですね。しかしこれも理由ははっきりしておらず、人間の欲望(煩悩)を制御するためであったり、出産や月経による「血」を遠ざけるなどの説だったり、子供を産むという大切な役割を担う女性を危険に晒すわけにはいかない、という現実的な理由があったりもします。もう何百年も昔からの伝統/風習であり、きっと私のような凡人が触れてはならない崇高な「精神」の世界なんでしょう。
これらの歴史と男女の差別を同次元で語ることは不可能なんですが、伝統的に男女を区別するという行為は続いている。この事実は認識しておくべきです。
問題の本質を見失った日本
最近の国内における報道を見ていると、なんでもかんでも「男女比を合わせる=ジェンダー平等」と安易に捉えられている気がしてなりません。「女性国会議員を増やすべき」「会社役員にもっと女性を登用すべき」実現できたらすばらしいことであり、その目標自体を否定するつもりは全くないんですが、これらは「結果としてそうなる」類の指標であって、男女の比率を形だけ合わせることが目的ではないんですよ。完全に問題の本質を見失っています。
忘れてはいけないのは、誰かを蔑視したり軽視することなく、互いの違いを認め、尊重し合うこと。
そして最も大切なのはその「気持ち」や「精神」であって、形にこだわる必要はないということ。
例えるならば愛する人へプレゼントを贈る場合「喜ばせたい!」という気持ちが大切なのであって、なにを渡すかはさほど重要ではない、これと同じですね。
日本国内における最近の議論は、世界のジェンダー問題と比べても、また日本の歴史から鑑みても、「うすっぺら」で「場当り的」。流行に乗って「誰かをバッシングする」そのためのツールとして活用しているようにしか見えません。
そう考えるとジェンダーギャップ指数それ自体についても、残念ながら問題の本質を表す指標にはなっていないと言えるのではないでしょうか。
今、日本人がやるべきこと
日本人がずっと大切にしてきた「相手を想う心」「そっと寄り添う姿勢」
それは言葉にすると安っぽくなり、でしゃばりすぎると恩着せがましい。
相手の気持ちに思いをはせ、心を察する。どこまでも謙虚で奥ゆかしいその姿勢は、世界に誇れる日本の文化であり精神ではないでしょうか。「小笠原流礼法」「匠の技」などはそれが形となって表れた一例ですが、合理性を追求する外国の方には理解し難い考え方かもしれません。
今、世界中に憎悪とも呼べる差別が蔓延しています。
コロナという未知のウィルスは人間の体だけでなく、心まで蝕(むしば)んでいるようです。
そんな時代だからこそ、我々日本人が今やるべきことは、男女の数合わせのような低次元の議論に巻き込まれることではなく、差別の本質を見極め、日本人の「精神」を見失わないこと。
その精神はいつの日か、世界中が求める「心のワクチン」となるかもしれません。
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